サブリースは管理会社が物件を借り上げて入居者に貸す契約で、管理委託はオーナーが貸主のまま管理業務だけを任せる契約です。受け取れる収入の安定性、賃料を決める権限、解約のしやすさが大きく異なります。
本記事では、サブリースのうち空室にかかわらず契約で定めた借上げ賃料が支払われる家賃保証型(入居者からの賃料収入に連動して借上げ賃料が変わる方式は除く)を中心に、契約の仕組みと収入の違い、それぞれのリスクを整理します。あわせて、物件に合う方式の判断基準や契約前の確認事項、サブリースから管理委託へ切り替える際の注意点も確認します。
サブリースと管理委託は契約の仕組みがどう違うのか
サブリースは管理会社がオーナーから物件を借りて入居者へ又貸しする賃貸借契約です。管理委託はオーナー自身が貸主として入居者と契約し、募集や家賃管理などの業務だけを管理会社へ任せる委託契約です。
どちらも「管理会社に任せる」点は同じですが、法律上の立場がまったく異なります。サブリースでは、オーナーは管理会社に物件を貸す「大家」の立場になり、入居者とは直接の契約関係を持ちません。
入居者と契約するのは誰か
サブリースでは入居者の契約相手はサブリース会社で、管理委託では入居者の契約相手はオーナー本人です。
サブリースは、オーナーとサブリース会社の「マスターリース契約」と、サブリース会社と入居者の「転貸借契約」の二層で成り立ちます。マスターリース契約は、賃貸住宅管理業法で「特定賃貸借契約」と呼ばれています。
管理委託では、オーナーが入居者と賃貸借契約を結び、管理会社とは別に管理受託契約を結びます。入居者から見た貸主はオーナーであり、管理会社はその代わりに窓口業務を担う立場です。
違いを一覧で比較する
契約の種類、入居者の契約相手、家賃収入の形、空室リスク、賃料の決定、解約のしやすさ、適用される規制の7項目で比べると違いが整理できます。
| 比較項目 | サブリース | 管理委託 |
|---|---|---|
| 契約の種類 | オーナーとサブリース会社の賃貸借契約(マスターリース契約) | オーナーと管理会社の管理受託契約 |
| 入居者の契約相手 | サブリース会社 | オーナー |
| 家賃収入の形 | 契約で定めた借上げ賃料を受け取る | 入居者の家賃から管理手数料を引いた額を受け取る |
| 空室リスク | 契約上はサブリース会社が負う(賃料の見直しはあり得る) | オーナーが負う |
| 賃料・募集条件の決定 | マスターリース契約で合意した範囲内でサブリース会社が決める | オーナーが決める |
| オーナーからの解約 | 普通借家契約では、オーナー都合の更新拒絶・解約申入れに正当事由が必要 | 契約の解約条項に従う |
| 主な規制 | 賃貸住宅管理業法の特定賃貸借契約の規律、借地借家法 | 維持保全を含む賃貸住宅管理業について、登録業者に賃貸住宅管理業法の規律 |
サブリースを選ぶメリットと見落としやすいリスク
サブリースは空室があっても契約で定めた賃料を受け取れ、入居者対応も任せられる点がメリットです。一方で、賃料の減額請求、契約期間中の解約、修繕費用の負担というリスクがあります。
入居者の募集や家賃の回収、クレーム対応はサブリース会社が貸主として行うため、オーナーの手間は大きく減ります。ただし、消費者庁が掲載する注意喚起のリーフレットでは、次の3つのリスクを契約前に確認するよう呼びかけています。
家賃保証でも借上げ賃料は減額される可能性がある
契約書に家賃保証とあっても、普通借家契約のマスターリースでは借地借家法第32条によりサブリース会社から減額を請求される可能性があります。
「〇年間は賃料を確実に保証する」と説明を受けていても、契約期間中や更新時に減額請求を受けることがあります。ただし、減額請求を受けた場合でも、そのまま受け入れなければならないわけではありません。
修繕や原状回復の費用は原則オーナーが負担する
マスターリース契約でも、原状回復費用や大規模修繕費用は原則としてオーナーの負担です。
家賃を受け取るだけで済むと考えていると、退去や築年数の経過に伴う出費で収支計画が崩れます。どの修繕を誰が負担するか、指定業者での施工が条件になっていないかを契約前に確認しておきます。
オーナーからの解約や更新拒絶には正当事由が必要
サブリース会社側からの解約条項がある一方で、普通借家契約のマスターリースでは、オーナー都合の更新拒絶や解約申入れに借地借家法第28条の正当事由が必要です。定期借家契約の期間満了による終了や、双方の合意による解約とは区別されます。
契約書にサブリース会社から解約できる旨の規定があれば、契約期間中でも解約される可能性があります。反対に、オーナーが「条件が合わないのでやめたい」と考えても、すぐには契約を終えられない非対称な関係になりやすい点に注意が必要です。
管理委託を選ぶメリットと注意点
管理委託は家賃を満額オーナーが受け取り、賃料や募集条件を自分で決められる点がメリットです。その反面、空室があれば収入が減り、滞納も家賃債務保証の有無や範囲によっては入金に響く点に注意が必要です。
管理会社に支払うのは、契約で定めた管理手数料と、募集時などに発生する費用です。入居が安定している物件ほど、手元に残る金額は多くなります。
賃料や募集条件をオーナーが決められる
貸主はオーナー本人なので、賃料や募集条件、入居審査の方針を管理会社の提案を受けながら自分で決められます。
相場に合わせて賃料を上げる、設備を入れ替えて募集条件を見直すといった判断も、オーナーの意思で進められます。その分、判断を誤ったときの影響もオーナーが引き受けることになります。
空室は減収に直結し、滞納の影響は保証内容で変わる
家賃は入居中の部屋の分だけ入るため空室期間はそのまま減収になり、滞納も家賃債務保証を利用していなければ入金が減ります。
家賃債務保証を利用している場合は、保証契約の範囲内で保証会社から立替払いを受けられることがあります。滞納が起きたときに督促をどこまで管理会社が行うか、法的手続きが必要になった場合の費用を誰が負担するかは契約内容によって異なるため、滞納時の対応範囲は契約前に書面で確認しておきます。
登録業者には重要事項説明と定期報告の義務がある
維持保全を含む賃貸住宅管理業を行う事業者は、管理戸数200戸以上で国土交通大臣への登録が必要で、200戸未満で任意に登録した業者を含め、登録業者には契約前の重要事項説明や少なくとも年1回の定期報告などが義務付けられています。
- 契約締結前に、報酬や管理業務の内容・実施方法を書面で説明する
- 家賃・敷金など入居者から受け取った金銭を、自社の財産と分けて管理する
- 管理業務の実施状況や入居者からの苦情の状況を、オーナーへ定期的に報告する
- 営業所ごとに業務管理者を1名以上置く
家賃などの金銭管理だけを行う事業は登録の対象外で、サブリース事業者も同法上の賃貸住宅管理業を行う場合は同じ基準で登録の対象になります。管理の実態を把握しやすいように、報告の頻度と内容は契約書で確認しておきましょう。
管理業務の流れは「賃貸管理のサービス内容」でも紹介しています。
収入と手取りはどう違うのか
サブリースは満室想定より低く設定された一定額を受け取り、管理委託は入居状況に応じた家賃から管理手数料を引いた額を受け取ります。そのため、満室に近いほど管理委託の手取りが多く、空室が多いほどサブリースが有利になります。
サブリース会社は、入居者から受け取る家賃とオーナーへ支払う借上げ賃料の差額で事業を成り立たせています。借上げ賃料の水準は契約ごとに異なるため、提示された金額を満室時の家賃総額と比べて確認することが出発点です。
仮の数字で手取りを比べる
満室家賃が月100万円の物件で、借上げ賃料を満室家賃の85%、管理手数料を家賃の5%と仮定すると、入居率が約9割を下回るとサブリースの受取額のほうが多くなります。各戸の家賃が同額で、滞納やフリーレントがなく、管理手数料以外の費用を除いた比較です。
| 入居率 | サブリース(仮定85%) | 管理委託(手数料5%と仮定) |
|---|---|---|
| 100% | 85万円 | 95万円 |
| 90% | 85万円 | 85.5万円 |
| 80% | 85万円 | 76万円 |
数値は比較のための仮定で、実際の借上げ賃料や手数料率は契約によって異なります。同じ前提なら「借上げ賃料 ÷(満室家賃 ×(1 − 手数料率))」で、管理委託と受取額が並ぶ入居率の目安を計算でき、各戸の家賃が異なる物件では戸数ではなく、見込める家賃収入が満室家賃に占める割合で比べます。
サブリースには賃料が支払われない免責期間や賃料の見直しがあり、管理委託にも募集時の広告料などがかかります。手数料以外の費用は「賃貸管理でかかる費用の内訳」で整理しています。
礼金や更新料の帰属も収入差になる
サブリースでは礼金や更新料などの一時金を誰が受け取るかも契約で決まるため、月額の賃料だけでなく一時金の扱いも比べます。
管理委託では、礼金や更新料は貸主であるオーナーが受け取る形が基本ですが、更新手続きなどの手数料の取り決めは契約によって異なります。サブリースの提案を比べるときは、月額賃料に一時金の扱いを加えた年間の受取額で比較すると、見かけの差に惑わされにくくなります。
自分の物件にはどちらが合うかの判断基準
見込める入居率が受取額の並ぶ入居率の目安を下回りそうならサブリース、上回りそうなら管理委託が収支面で合いやすくなります。そのうえで、借入の返済額と、借上げ賃料が減額された場合の耐性を加えて判断します。
| 判断の軸 | サブリース寄り | 管理委託寄り |
|---|---|---|
| 入居率の見込み | 受取額が並ぶ入居率の目安を下回りそう | 目安を安定して上回りそう |
| 借入の返済 | 入金の変動を手元資金で吸収しにくい | 空室期間の減収を手元資金で吸収できる |
| 減額への耐性 | 減額後の借上げ賃料でも返済が回る | 減額されると返済が回らず、一定額を受け取る利点が薄れる |
サブリースを検討しやすいケース
借入の返済のために毎月の入金を一定にしたい場合や、賃貸経営に時間を割けない場合はサブリースを検討しやすくなります。
ただし、借上げ賃料は将来減額される可能性があります。返済計画は、減額を受けた場合でも回るかどうかまで試算しておくことが前提です。
管理委託が合いやすいケース
需要が安定した立地で入居が見込め、賃料や募集条件を自分で判断したい場合は管理委託が合いやすくなります。
空室が続いている場合でも、原因が募集方法や管理会社の対応にあるなら、方式を変える前に管理の見直しで改善できることがあります。現在の管理状況に不安がある場合は「管理会社診断」で気になる点を整理できます。
契約前に確認したいポイント
サブリースは賃料改定の条件・免責期間・解約条項・費用分担を、管理委託は業務範囲・手数料・報告方法・解約予告期間を、重要事項説明の書面で確認します。
賃貸住宅管理業法では、サブリース会社と登録を受けた管理業者に、契約前の書面交付と重要事項説明が義務付けられています。国土交通省は、説明から契約締結までに1週間程度の期間を置くことが望ましいとしているため、書面は持ち帰って読み込むのが基本です。
サブリース契約で確認する項目
確認すべき項目は、借上げ賃料と改定の時期、賃料が支払われない免責期間、双方の解約条件、修繕や原状回復の費用分担です。
- 借上げ賃料の額と、見直しの時期・方法
- 契約開始時や退去後の免責期間の有無と長さ
- サブリース会社からの解約条項と、オーナーから解約する場合の条件
- 修繕・原状回復の費用分担と、施工業者の指定の有無
- 礼金・更新料など一時金の帰属
管理委託契約で確認する項目
確認すべき項目は、管理業務の範囲と手数料に含まれる内容、定期報告の方法、契約期間と解約予告期間です。
- 管理手数料に含まれる業務と、別料金になる業務
- 定期報告の頻度と報告内容
- 解約予告期間と違約金の有無
契約後に対応の悪さに悩まないためには、担当者の説明の丁寧さも判断材料になります。見極め方は「避けたい管理会社の特徴」で紹介しています。
サブリースから管理委託へ切り替えられるのか
切り替えは可能ですが、普通借家契約のマスターリースではオーナー都合の更新拒絶や解約申入れに正当事由が必要になるため、簡単ではありません。まず契約書の解約条項を確認し、サブリース会社と合意解約を協議するのが現実的です。
管理委託同士で管理会社を変える場合は、契約の解約条項に従って手続きを進めます。これに対して、普通借家契約のマスターリースでは借地借家法の保護がサブリース会社側に働くため、オーナーの都合だけでは契約を終えにくい構造です。
契約書で最初に確認する条項
最初に確認すべき条項は、契約期間と更新の定め、オーナーからの解約条項、解約時の違約金、入居者との転貸借契約の引継ぎ方法です。
サブリース契約を終えると、入居者との契約をオーナーが引き継ぐのか、どの時点で家賃の受取先が変わるのかが問題になります。入居者への通知や敷金の扱いも含め、合意書で取り決めておくと混乱を防げます。
困ったときの相談先
契約内容の判断に迷う場合は、業界団体の相談窓口や、消費者ホットライン188、法テラスなどの窓口を利用できます。
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅ご相談窓口
- 公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)の相談窓口(一般的なトラブル相談。賃貸借契約など法律に関わる相談は対象外)
- 法テラス・サポートダイヤル(法的トラブルの総合案内)
- 消費者ホットライン188(最寄りの消費生活相談窓口)
正当事由の有無や解約の可否は個別の事情で判断が変わるため、交渉が難航する場合は弁護士など法律の専門家に相談してください。
よくある質問
サブリースの免責期間とは何ですか
契約開始直後や入居者の退去後など、サブリース会社がオーナーへ賃料を支払わない期間のことです。有無や長さは契約によって異なるため、重要事項説明の書面で確認してください。
サブリース会社から賃料の減額を求められたらどうすればよいですか
減額請求を受けても、そのまま受け入れる義務はありません。減額の根拠となる周辺相場や収支の資料を求めて協議し、判断に迷う場合は相談窓口や法律の専門家に相談してください。
個人オーナーのサブリース契約に消費者契約法は適用されますか
オーナーが個人で、同種の取引を反復継続して行っているとはいえない場合は、マスターリース契約が消費者契約に該当し、消費者契約法の適用を受ける可能性があります。消費者庁が掲載するサブリース契約の注意喚起リーフレットにもこの旨の注記がありますが、該当するかは個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は法律の専門家に確認してください。
管理委託で一部の業務だけを任せることはできますか
入居者募集だけ、家賃管理だけといった一部の委託も可能です。何を任せて何を自分で行うかを契約書に明記しておくと、対応漏れを防げます。
管理方式の見直しを考えている方へ
サブリースと管理委託のどちらが合うかは、物件の立地や入居状況、借入の状況によって変わります。まずは現在の契約書と収支を並べ、どこに不安があるのかを整理することから始めるのがおすすめです。
- 現在の契約形態(サブリースか管理委託か)と契約期間
- 直近1年の入居状況と、実際に受け取った家賃収入
- 借上げ賃料または管理手数料の額と、見直しの条件
- 借入の毎月の返済額と、返済が終わる時期
現在の管理で気になる点は「管理会社診断」で整理できます。管理委託で任せられる業務の範囲は「賃貸管理のサービス内容」にまとめています。
