賃貸管理でオーナーが支払う費用は、毎月の管理手数料だけではありません。募集時の広告料・仲介手数料、更新料、退去時の原状回復費用、解約時の違約金など、場面ごとに追加費用が発生します。本記事はオーナー(貸主)向けに、手数料以外の出費を含めた費用の全体像と目安を整理します。管理手数料そのものの相場は「賃貸管理の料金・プラン」で確認できます。

賃貸管理でかかる費用の全体像|手数料以外にもこれだけある

賃貸管理でかかる費用を、毎月の管理手数料・入居者募集時の仲介手数料と広告料・契約更新時の更新料と更新事務手数料・退去時の原状回復費用・管理会社を通さない固定費の5つの場面に分けて示す図

賃貸管理の費用は、「毎月の管理手数料」「募集時」「更新時」「退去・解約時」「管理会社を通さない固定費」の5つの場面に分けて考えると全体像を把握しやすくなります。管理手数料の金額だけを比較すると、実際にかかる総額を見誤りやすいためです。

本記事はオーナー(貸主)向けの内容で、入居者が家賃とあわせて支払う「共益費・管理費」とは別のテーマです。管理業務の範囲そのものは「賃貸管理サービス」で確認できます。

場面発生しうる費用支払うタイミング
毎月(管理中)管理手数料(集金代行・サブリース等)毎月
入居者募集時仲介手数料、広告料(AD)入居決定時
契約更新時更新料(入居者→オーナー)、更新事務手数料(オーナー→管理会社)更新のたび
退去時原状回復費用(オーナー負担分)退去のたび
管理会社の解約時違約金(契約条件による)解約時のみ
管理会社を通さない固定費保険料、固定資産税・都市計画税、確定申告費用、設備修繕費年1回など

管理手数料そのものの相場(前提知識・詳細は別記事)

国土交通省の調査では、管理報酬(サブリースを除く)は「家賃収入の5〜10%未満」と回答したオーナーが最も多く、次いで「5%未満」「10〜20%未満」の順でした。サブリース(家賃保証)は管理委託とは異なり、事業者が物件を借り上げて転貸する契約方式のため、保証賃料と市場賃料の差を単純に「手数料率」として比較できない点に注意が必要です。

具体的な料金体系やプランの考え方は「賃貸管理の料金・プラン」で解説しているため、本記事では手数料以外の費用に絞って説明します。

入居者募集でかかる費用|広告料(AD)と仲介手数料の相場

入居者募集では、管理手数料とは別に「仲介手数料」(家賃1ヶ月分相当額+消費税が貸主・借主合計の上限)と、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額として仲介手数料とは別に受領される「広告料(AD)」がかかる場合があります。ADの金額や支払い条件は個別の合意によって決まるため、募集を依頼する段階で仲介会社に確認してください。

AD(広告料)とは何か・表記の読み方

広告料(AD)は、募集条件書などで家賃に対する割合として表記されることがありますが、表記の対応関係や具体的な金額は仲介会社・物件ごとに異なり、公的に統一された基準があるわけではありません。国土交通省の解釈上、宅建業者が仲介手数料とは別に受領できる広告料金は、依頼者(オーナー)の依頼によって行う広告の料金に相当する額に限られます。

募集を依頼する際は、広告の内容・金額・支払い条件を仲介会社と個別に確認し、書面で合意しておくことが実務上のポイントです。

仲介手数料と広告料はオーナー・入居者どちらが払うか

居住用建物の仲介手数料は、貸主・借主の双方から受け取る合計で家賃1ヶ月分相当額+消費税が上限です。各当事者から受け取れる額は原則として家賃0.5ヶ月分相当額+消費税までですが、媒介を依頼する際に依頼者の承諾を得た場合は、一方から家賃1ヶ月分相当額+消費税まで受領できます。

広告料(AD)は、依頼者(オーナー)の依頼によって行う広告の料金に相当する額として、仲介手数料とは別に受領できる場合があります。誰がいくら負担するかは媒介契約の内容によって変わるため、契約前に確認してください。

契約更新でかかる費用|更新料と更新事務手数料の違い

契約更新では、入居者からオーナーへ支払われる「更新料」(家賃1ヶ月分程度が目安)と、オーナーが管理会社へ支払う「更新事務手数料」は別物で、両方が発生するかどうかは契約内容や地域の慣行によって異なります。

項目支払う人受け取る人目安
更新料入居者オーナー(貸主)家賃1ヶ月分程度(地域・契約により異なる)
更新事務手数料オーナー管理会社契約により異なる

更新料の慣行がない地域や物件では、そもそも更新料自体が発生しないこともあります。管理委託契約を結ぶ際は、更新事務手数料の有無・金額を見積書や契約書で個別に確認してください。

退去・原状回復でオーナーが負担する費用の範囲

退去時の原状回復費用は、経年劣化・通常損耗分はオーナー負担、故意・過失や善管注意義務違反による損耗分は入居者負担という考え方が基本です。具体的な金額は物件の状態や工事内容で大きく変わるため、退去が決まった段階で内訳付きの見積もりを確認する必要があります。

経年劣化・通常損耗とオーナー負担の考え方

通常の使用による損耗・経年劣化にあたる修繕費は、オーナー(貸主)負担が原則です。国土交通省が公表しているガイドラインでは、クロスの日焼けや家具の設置跡、設備の耐用年数超過による交換などは通常損耗・経年劣化に分類され、入居者に故意・過失や善管注意義務違反がない限りオーナー負担とされています。

ガイドラインの詳細な区分や直近の改定内容は、国土交通省の公式情報で確認してください。

原状回復費用の目安額

原状回復費用は、間取り・使用年数・設備の種類、クリーニング単価や設備交換の要否によって大きく変動するため、一律の相場を示すことはできません。退去が決まった段階で管理会社や施工業者から内訳付きの見積もりを取り、経年劣化・通常損耗分と入居者負担分の区分を確認することが実務上のポイントです。

管理会社を変更するときにかかる違約金・解約費用

管理委託契約を予告期間内に解約すると違約金が発生することがあり、契約条件次第では高額になった事例も報告されています。金額は個別の契約内容によって大きく異なるため、一律の相場として断定はできません。

違約金が発生しやすい契約条件

解約予告期間の長さや違約金の有無・金額は管理委託契約ごとに異なり、契約条項によっては予告期間を守っても別の違約金が適用される場合があります。契約書の「解約」「中途解約」「違約金」といった項目を事前に確認しておくことが対策になります。

円満に管理会社を変更するための確認ポイント

現行契約書の解約条項・予告期間・鍵や書類の引き継ぎ範囲を事前に確認してから解約通知を出すと、トラブルを避けやすくなります。

現在の管理状況を整理してから乗り換えを検討したい場合は、「管理会社診断」でチェックできます。変更を検討するきっかけになりやすい特徴は「避けたい賃貸管理会社の特徴」でも確認できます。

管理会社を通さず発生する固定費用|保険料・税金・修繕費

管理会社への支払いとは別に、固定資産税(毎年1月1日時点の所有者に課税)や、対象地域では都市計画税、契約に応じた保険料、税理士へ依頼する場合の確定申告代行費用、故障・経年劣化が生じた際の設備修繕費も見込んでおく必要があります。

火災保険料・施設賠償責任保険料 契約内容や物件の規模・構造により支払い周期・金額が異なる
固定資産税・都市計画税 固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税。都市計画税は市街化区域など対象地域のみ課税
所得税の確定申告費用 税理士へ依頼する場合の代行費用を含む
給湯器・エアコンなど設備の修繕費 経年劣化・故障により発生する変動費

これらは管理会社の請求書に含まれないことが多く、オーナー自身で資金を確保しておく必要がある費用です。特に施設賠償責任保険料や確定申告代行費用は見落とされやすいため、収支計画に組み込んでおくことをおすすめします。

手数料以外を含めた年間費用シミュレーション

家賃20万円の物件を例にすると、管理手数料(月1万円前後)に加えて、入居者が入れ替わる年は広告料・仲介手数料・原状回復費用がまとまって発生し、通常年より年間コストが大きく上振れます。

項目入居者が変わらない年入居者が入れ替わる年(目安)
管理手数料(月1万円×12ヶ月)12万円12万円
広告料(AD、家賃1ヶ月分想定)0円20万円程度
仲介手数料(家賃0.5〜1ヶ月分想定)0円10万〜20万円程度
原状回復費用(オーナー負担分)0円契約内容・工事内容による(別途見積もり)
年間合計の目安(原状回復費用を除く)12万円程度42万〜52万円程度+原状回復費用

上記はあくまで一例の試算です。原状回復費用は工事内容によって差が大きいため合計に含めず別枠で見積もる形にしています。

実際の金額は物件の家賃・立地・契約条件によって変わるため、管理会社に見積もりを依頼し、通常年と入居者入れ替え年の両方で年間コストを確認しておくと、収支計画が立てやすくなります。

よくある質問

管理手数料が0円のプランは本当にお得ですか

管理手数料が0円でも、広告料・更新事務手数料・その他の名目でオーナー負担分が徴収されるプランがあります。手数料だけでなく、募集時・更新時・退去時にかかる費用の総額を見積書で確認したうえで比較することをおすすめします。

違約金を払わずに管理会社を変更する方法はありますか

解約予告期間や違約金の有無・金額は管理委託契約ごとに異なります。予告期間を守っても別の違約金条項が適用される可能性があるため、解約を検討する段階で契約書の「解約」「中途解約」「違約金」の各条項を確認してください。

原状回復費用は入居者と折半できますか

原状回復費用は「折半」ではなく、経年劣化・通常損耗分はオーナー負担、故意・過失や善管注意義務違反による損耗分は入居者負担という区分が基本の考え方です。実際の負担割合は退去立ち会い時の状況確認と見積もりの内訳によって決まります。

広告料(AD)は必ず払わないといけませんか

広告料(AD)は法律で一律に義務付けられた費用ではありません。宅建業者が仲介手数料とは別に受領できる広告料金は、依頼者(オーナー)の依頼によって行う広告の料金に相当する額に限られるため、依頼するかどうか、金額・支払い条件をどうするかは仲介会社との個別の合意で決まります。